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くろこのばすけ身内企画!
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ほらはりぼてのユートピア/7番×今吉@げつ

愛されていないわけではない。決して。断じてそういうわけではない。
『甘いもん食いたい』
たった一文、絵文字も顔文字もない無題のメールを見て、俺は溜息を吐いた。

どうしようもない我侭かつ気分屋である我らが桐皇バスケ部キャプテン・今吉と付き合い始めたのは3年に入ってから。1年の頃からひとつ上の先輩を追いかけ続けてふらふら地に足着かない今吉のそばにいるうち、いつの間にか当たり前になってしまった定位置。いつの間にか恋人というポジションまで距離は詰まっていたのだった。変な話だ。奇妙な話だが、しかしそうとしかいいようがない。
一方的に先輩に想いを寄せていた頃の今吉は、普段の飄々とした様子も試合中の獰猛な様もなく、ただ危なっかしかった。過剰なアピールをするでもなく、大和撫子のように遠くで見ているでもなく、先輩と後輩というごくごく普通の信頼関係を築いていた。だから、今吉が2年という長い間、先輩に好意を抱いていたという事実は、恐らく、俺しか知らない。好意を寄せられていた先輩本人さえ知らない。俺がそのことを知ったのも事故のようなもので、ものすごい確率の偶然の結果だったから。
今吉は隠すのが上手い。今だって、昔だって、たぶん、これからもそうだ。これからも彼は隠し続けるのだろう。自分が見るのは、いつだって今吉が取捨選択し終わった後の、整頓され尽くした彼である。たしかな距離というか、壁は感じるが、かといって物足りない、と思うほどまだ自分は今吉のことを知らない。
それでも、このメールに拒否権がないことなどは分かりきっている。どうせ相部屋である部屋に戻っても鍵は開けてもらえまい。
しょうがないともう一度溜息を吐き、携帯を片手に学生寮から徒歩8分のコンビニへ向かう。

(……甘いモン、っつってもなあお前、)
今吉は基本的に甘いものを好まない。ケーキなどの類は1つ食べるのもやっと、食べると胸焼けをおこすし、チョコレートなどにおいだけで勘弁(おかげでバレンタインの処理が大変なのだ)、生クリームや餡子など甘ったるいだけの甘味を基本的に好まない、根っからの辛党である。
それでも気紛れであるからゆえ、あるとき急に「ちょっとつまみたい」気分になるときもある。そういうときは、正直すごく困る。
普段甘いものを食べない人間がちょっとつまむ程度に食べる甘いものなど、知ったことではない。
だが、こういう時に連絡をすると確実に彼の不機嫌を誘うことは分かっているので、俺はせいぜいこの時間をゆっくり使うことにする。
何にしたものか、プリン、ゼリー、飴、菓子パン、……――

(せいぜい悩むがいいさ)

自分の見る今吉は、常に彼が取捨選択し隠すべきものを綺麗に隠してしまった、整頓された今吉の姿である。あいつは常に何かしらのものを隠している。逆に言えば、あいつは常に何か隠さなければならないものを持っている。たとえ投げ出したくともできない何かを。
今この時間、たとえば突拍子もない我侭で自分を困らせ、部屋から追い出すこの時間、今吉は自分を取り繕うために必死なのだ。俺はそれを知っている。だから女王様よろしく好き勝手を云う今吉に付き合う。
お前が俺に見せる自分で悩んでる間ぐらい、俺もお前のこと考えてやるよ。
そうとでも思っておけば、そう悪い気はしない。全てをさらけださずとも成立する恋愛はある。きっと俺たちにはそれぐらいがちょうどいいのだ。

『麦チョコでよかったか?』
『なんでもええわ早よ帰ってきいバカ佳典』

……つくづく勝手な女王様の命令に、携帯をポケットに入れる。さあ、ダッシュで部屋に帰って我らが女王様に駄賃でももらおうかね。





まさかの桐皇7番という無茶振り!是非この男前が世に広まるといいと思います

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ピーターパンシンドローム/大坪×緑間@げつ

『浮いてるっちゃ浮いてるけど、別にハブられてるワケじゃないんすよねー。なんつーか、一匹狼?みたいな?……っつーか大坪さん心配してるんですか?ホントお父さんみてえ!』

来る日も来る日も、図書室でひとり、可愛く頼りになるがそれなりに個性的で誤解をされやすいタイプであろう後輩が黙々と本を読む姿を見たら、誰だって心配になるものではないのだろうか?目の前で失礼にもゲラゲラ笑う高尾の姿を腹立たしいような安心したような複雑な心境で見ている俺である。それにしても今の話のどこに目に涙を浮かべるほど爆笑できる要素があったのだろうか。緑間もそうだが、高尾も緑間とはまた違った意味で、大変個性的な男だ。うちの後輩はモンスターばかりかと主将として頭を抱えることも多い。


今日も今日とて図書室に足を運ぶと、やはり窓際の一番奥でひとり黙々と本を読む緑間の姿がある。当たり前のようにそこに座って(事実、当たり前に毎日その席にいるのだが)、昨今の群れる高校生の習性を知らぬかのようにひとり、綺麗な姿勢で、切れ長のその目で、文字の羅列を追っている姿は、遠くから黙ってみていれば画になるものだ。
俺は適当な書架から適当な本を適当に取って適当なページを開き、緑間の隣の席に座った。俺の知っている限り、この席に人が座っていたことはなかったが、緑間は俺に気付いた様子さえなく活字を追い続ける。ちらりと覗き見ると、教科書に出てきそうな堅苦しい文体が目に入った。どんな本かも分からないが、とりあえず俺には魅力が理解できない本だということは分かった。昔から活字はそんなに得意ではない。嫌いでもないのだが、紙に印刷された文字を読むことより、身体を動かすほうが遥かに好きだ。
それにしても緑間の集中力には驚くものがある。片時も本から目を離さず瞬きも惜しむかのようにレンズ越しの目が上から下へと動くのだ。まるで機械のように文字を捕まえ自分の中に取り込む作業は存外に見ていて面白いものだ。
「……なんですか、主将」
「気付いてたんならまず挨拶だろう」
「……どうも」
……何の前触れもなく緑間の口が開いた。決して文面から目を離さず、口だけが動く。図書室という場所とこの距離感のせいだろうか、若干掠れた小声だった。
「よくそんなにハマって読めるモンだな」
「まあ、」
感心したことを素直に言っただけだが、見事に反応が薄い。人によってはかなり失礼で誤解される場面だが、生憎、これは緑間にしてはかわいいほうの無礼なので許容してしまう。
(こうやって甘やかすのがいけないのかもしれない)
ぼんやり考える。
機械のように文字だけを追う緑間と、その緑間をただ見ているだけの俺。なんという時間の浪費だろう。机の下の、長い足を絡めても何の抵抗もない。

(…へんなやつだよなぁ、俺も、こいつも)

モンスターばっかりだ、どいつもこいつも。
いずれ人間になるであろうモラトリアムはきっとまだ長い。


ピーターパン・シンドローム
(まるで時間が止まったみたいな世界ね)




タイトルは魁さんから!
大坪さんが掴めず苦戦するも緑間受楽しすぎてどうしようかと思いました。美人受!美人受!!本と真ちゃんってなんかストイックでお似合いでいいですよね!これを書いてる途中、真ちゃんはイギリス純文学が好きだと良いな、という妄想をしました。イギリス純文学ってそんなに読んだことないけど。←

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あかんべー/笠松×今吉@げつ

※社会人パラレル。



 今吉は笠松が気に食わないのだという。本人を目の前にしゃあしゃあとこの言葉を吐かれたその日、笠松にショックや不安などは毛頭もなく、むしろ呆ればかりが心の中を占めた。「じゃあ何で付き合ってるんだよ」と訊いたら「気に食わんけど嫌いやないからやん」と当たり前のように返される。彼は唇を尖らせて笠松の淹れたコーヒーを飲んだ。
「熱いし甘いし濃すぎやわぁ、40点」
 気に食わない、と笠松は思った。この瞬間、奇しくもふたりは同じ感情で繋がっていたわけだ。

 今吉には存外子供らしいところがある。それを本人に云うと、例の「気に食わない」発言が飛び出すので、笠松がそれを口にすることは滅多にないが。
「何食うー?」
「何でもええわ~なんか適当に頼むわ」
「一番やりづれえよ」
 今吉は本来なんでもそつなくこなす小器用なタイプの人間のはずだったのだが、どうも笠松と同居し始めてからというもの味を占めたらしく、滅多にキッチンには立たなくなった。彼曰く、「だって自分で作った飯より人の作った飯のが美味いやん」。そのくせにちょくちょく「甘すぎ」「なんか飯がやわい」と姑のような文句を零しながら、笠松と飯を食べる。文句を云いつつ基本的に食事を残すことは、まずない。幸か不幸か、笠松はそういった面倒くさい人間の扱いには人より慣れていたので、特に怒ることもなく今吉のその悪癖を受け入れてしまい、今に至る。
「わはは、精々ワシのために美味い飯作ってくれや」
 今やすっかり大きな子供と化した今吉は悪戯が成功した子供のように舌を出す。
(そういうとこが子供っぽいっつってんだよ)
 大の大人がべーとか云ってもかわいいわけねーだろ。
 まったくもって気に食わない。一度触れ合えばその舌は途端に大人で男であることを主張するというのに。その舌を見るだけで、笠松は、彼に触れたいと、感じてしまうのに。
――そんなに気安く見せ付けてんじゃねーよ。
「気に食わねえ」
「あ?」
「何も」

 笠松は今吉が気に食わないのだという。今吉が言った言葉に対抗するように吐かれた言葉はどうやらただの反撃でもなかったらしくある程度本気だったようだ。彼と自分が同じ感情を持っている。それはなんだかとても不思議で、むず痒い感覚だった。今吉は彼が気に食わない。彼は今吉が気に食わない。それでもお互い好き合って、ひとつ屋根の下で暮らしている。
(気に食わん、けど、)
 悪くはない。小さく舌を出すと、笠松がぼそりと何かを云った。聞き取れなかったけれど、どうせ碌なことではないのだろう。今吉はごろりとカーペットに寝転んだ。
(何でも適当なモン作って早よ構えや)
 やっぱり気に食わない。自分以外のものを見ている彼、なんて。
「…あー腹減ったわぁ~」
「今作ってんだろ!」

 同じ感情を共有するふたりは、奇しくも似た者同士で、生憎素直ではなかった。


あかんべー




お互いを出し抜きたいふたり。すでに出し抜いてることには気づいてないふたり。意外と子供なふたりの意地の張り合いにどうしようもなくもえます。むしろこれが初・笠今ということにびっくりしています笑
タイトルは神ちゃんから!シチュエーションかな?とも思ったけどあえてそのままタイトルにしました。

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レモンイエローの恋をしました/降旗×木吉@げつ

 真夏の夜、蒸し暑い空の下、見上げると真ん丸い月がぽっかりと浮かんでいて。
「そうだ、コンビニ行こう」
「なんで京都行くノリなんすか……」
 隣の降旗が呆れたように笑う。その拍子に、恐らく無意識ではあろうが、慎ましく繋いだ降旗の手に少しだけ力が入る。夏場の人肌は特別そうは感じなくともやっぱり熱い。彼らの気持ちとは裏腹に汗で湿った手は滑りやすく、ともすればすぐに離れそうになる。だから、たとえそれが無意識であろうと、僅かに力の込められたこの手のひらほど幸福なものはないと木吉は感じた。笑う降旗は何のこともなさそうにこちらを見ていて、そんなことを考えているのは自分だけだと知るのだけれど。
 付き合ってまだ一ヶ月ほど。最初の頃は木吉の一挙一動に過剰反応しては彼を笑わせた降旗も、この一ヶ月で変わっている。良くも悪くも、木吉に影響されてきたというか、振り回されっぱなしだった彼も徐々に自分の地、というか、遠慮をすることがなくなった、というか。
 たとえば今のツッコミとか。自分からさり気なく差し出した手のひらとか。そういうものたちはきっと、一ヶ月前からは想像もできなかったものたちだ。
「しょうがないだろ、何か月が美味そうに見えたんだから」
 口を尖らせると降旗が吹き出した。
「あーたしかに。なんか、アレみたいですね。カントクの、」
「ああ、まるごとレモン?」
 二人顔を見合わせて、笑う。すっかり汗で湿った手のひらが強く、今度ははっきりとした意図を持って木吉の手を握る。察して屈むと、軽いキス。
「…これだけが不満なんすよね」
 降旗が苦笑して、木吉を見上げる。その顔の悪戯っぽさとは対称に、口調は真面目そのもので、木吉を不思議な気分にさせる。安心するような、少し不穏なような。自分の体格からして、追い越されるようなことも早々ないとは思っているが、恋人のこんな顔を見たら誰しも同じ気持ちになるんじゃないかと思う。
「じゃー降旗にはセンパイが牛乳を奢ってやろう」
「え、俺ファンタがいいっす!」
「奢ってもらうことは確定事項かよ!」
レモン色のスポットライトの中、彼らは笑う。そうだ、コンビニのあとにうちに誘ってみよう。木吉はふと考える。そして、降旗もまた。

夜はまだ、始まったばかり。









お題は魁さんが考えてくれたものです。降旗×木吉は私のイチオシCPです…もっと増えろ!><
お粗末さまでした!

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