「バっカじゃねぇの、アンタ」
言われて、頬が痛む。
「先輩は、馬鹿ですね」
笑われて、背中も軋む。
「先輩、頭悪いでしょ」
呆れられて、足が崩れそうになった。
「佳典は、バカやなぁ」
泣かれて、腹を撫でながら笑った。
『意味わかんねえよ、今吉は』『胡散臭い』『きめぇ』『何考えてんのか分かんねえ』『どっか見下してるよな』『むかつく』『俺たちのこと信用してねぇよな』『利用してますってか?』『馬っ鹿じゃねーの』『こっちだって信用してねぇよ』
そう言ってあいつらが笑った。
「どうでもいいことなのかもしれないけど」
殴られた腹を撫でて、俺は言う。今吉はつまらなそうな顔をした。この表情が、今吉がもっとも強がっている表情だと知っているものは少ない。にやにやとしているときより多いことを知っているものは恐らくもっと少ない。
『若松の奴バカじゃね?』『バカなのは今更だろ』『なんつーか青春してますって感じがイタイ』『熱血バカ』『うぜぇ』『てかキモくない』『試合でも大声だしててさ』『一生懸命ですってか』『ははっ』『一人だけ浮いてんの気付けっての』
そう言ってあいつらが笑った。
「お前のこと何も知らねぇのにぐだぐだ言って」
バカでいて、悪いのだろうか。自分たちの関係は表面的で、仲間、とは言えないけど(チームメイトって言っていいのかすら不明だ)。それでも知人が貶されていれば腹が立つのは当たり前だろう。
口の中にたまった血を吐き出す。タオルに付いたそれを見て、若松はため息をついた。二日前とは立場が逆転していてすこしおかしい。
『桜井ってうざくね』『うぜぇ』『ビビりか』『しょっちゅう何かきょどってやがんの』『あとすみませんんん!』『似てる!』『うっぜ』『謝ればいいと思ってんじゃねぇっつーの』『死ねばいいのに』『だな、さっさと死ねばいいのになー』
そう言ってあいつらが笑った。
「お前の努力も実力も知らねぇのに、僻んで」
ぐっと背伸びする。まだ痛みの残る背中と腹がびりっとした。顔に出たらしく、桜井は怒っているとも悲しんでいるとも取れる表情をした。心のままに嘲笑えれば、こいつもすっきりするのだろう。
『むかつくよな、青峰の奴』『偉そうにしやがって』『何様だっつう感じするよな』『つかゴールぶっ壊すって化け物かよ』『そのくせキレるし』『バスケしか出来ねぇくせにな』『めんどくさ』『なんで桐皇に来たんだか』『一人でやってろ』『俺たちはお前と違って凡人なんだっつーの』
そう言ってあいつらが笑った。
それが許せない。
「俺がむかつくんだよ」
隣で殺気のようなものを滲ませている青峰に笑った。青峰は俺を睨むだけで何も言わなかった。
テーマはげっちゃんから!
佳典さんのデータの少なさに泣いた!
[1回]
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