緑間という男は、その気位の高さでいろいろと損をしているのだろう。
本人はそれを自覚しているようで、その上で改めようとは思わないらしい。それは恐らく、そういった自分を貫くことを許されるだけの力があったことと、やはりプライドが高すぎるからなのだ。少しでもいいから周りの空気を読み、合わせてくれれば、緑間はきっと部の中心としてもっと受け入れられたはずだ。だが、緑間の性格上それは不可能なのだろう。キセキの世代としての立ち位置が、またその傾向を強めていた。
その行動が俺たちを見下しているからではないと気付いたのは試合直前、確信したのは負けてからだった。監督は最初からそのつもりで、高尾はちょっかいを出している過程で気付いたようで、宮地は同族嫌悪で、木村は俺と同じ時。
緑間は俺たちを責めることをせず、非難、中傷すべて背負って立っていた。
考えてみれば当たり前だったことだ。緑間はバスケにおける自分の才能を自覚しているし、才能だけに頼らないで努力することも怠っていない。見下す暇があるのなら練習しただろう。くだらない僻みに付き合うような男ではない。
ただ、腹は立つ。
才能だけを褒められることに反感を覚えていながら、何も言わないその自尊心に向かっ腹が立つ。努力も知られなくても良いという態度でいるから他の部員は気に食わないのだ。陰口も言われなれているかもしれないが、透かした顔で平然としているから気に障るのだ。こっちは俺と付き合いだして陰口が減ったとき、少しふっとしたのを知っている。そういうところで緑間は損をするのだ。
「おおつぼさん……」
声につられて視線を下げると、腕の中でまどろんだままの緑間は微笑していた。眼鏡を外した顔はどこか幼くなって、こんな風にあどけなさを残したままの緑間を見れるのもあまりない。意地っ張りな恋人は寝顔が一番穏やかなのだ。
顔立ちは秀麗といっても過言でないというのに、平時の緑間は高飛車であるが故に表情がきつく、また無愛想になる。不満顔の後輩ほど一緒に練習をやっていて苛立つものはいない。結局ここでも、緑間は損をしているのだ。
だがそれすらも緑間らしさなのだろう。努力もしない相手に受け入れられようと媚を売るくらいなら、一生孤高でも構わないのだ。アホなのだ。
「……ったくよ」
今は、頼ってくれるだけマシになったのだから強く文句は言えない。だがしつこく付き合っていくつもりだ。俺は、このように抱きしめてやれる。頑なな子ども一人を抱きしめるだけの腕はある。口説き文句を言えるような性格ではないし、そんな言葉は思いつかない。だから行動ですべて示す。素直でないこの男が納得するまで、何度でもくり返す。
頭を撫でてやると、気に入らなかったのか眉が寄った。手を離せばまた表情は緩み、眠りの中に沈んでいく。
「……ふん」
夢にいる俺の方が安心するなど腹立たしいことこの上ないが、それで甘え方を知らないこの恋人が微笑んでくれるというのなら、譲ってやらんこともない。
どうせ今だけなのだから。
お題はげっちゃんから!
緑間って美人ですよね^^ 身長高くって受にするには面倒なところも大好きです^^
[5回]
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