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くろこのばすけ身内企画!
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自分だって知らないけれど/桐皇七番@十色神矢

「バっカじゃねぇの、アンタ」
 言われて、頬が痛む。

「先輩は、馬鹿ですね」
 笑われて、背中も軋む。

「先輩、頭悪いでしょ」
 呆れられて、足が崩れそうになった。

「佳典は、バカやなぁ」
 泣かれて、腹を撫でながら笑った。



『意味わかんねえよ、今吉は』『胡散臭い』『きめぇ』『何考えてんのか分かんねえ』『どっか見下してるよな』『むかつく』『俺たちのこと信用してねぇよな』『利用してますってか?』『馬っ鹿じゃねーの』『こっちだって信用してねぇよ』
 そう言ってあいつらが笑った。

「どうでもいいことなのかもしれないけど」
 殴られた腹を撫でて、俺は言う。今吉はつまらなそうな顔をした。この表情が、今吉がもっとも強がっている表情だと知っているものは少ない。にやにやとしているときより多いことを知っているものは恐らくもっと少ない。


『若松の奴バカじゃね?』『バカなのは今更だろ』『なんつーか青春してますって感じがイタイ』『熱血バカ』『うぜぇ』『てかキモくない』『試合でも大声だしててさ』『一生懸命ですってか』『ははっ』『一人だけ浮いてんの気付けっての』
 そう言ってあいつらが笑った。

「お前のこと何も知らねぇのにぐだぐだ言って」
 バカでいて、悪いのだろうか。自分たちの関係は表面的で、仲間、とは言えないけど(チームメイトって言っていいのかすら不明だ)。それでも知人が貶されていれば腹が立つのは当たり前だろう。
 口の中にたまった血を吐き出す。タオルに付いたそれを見て、若松はため息をついた。二日前とは立場が逆転していてすこしおかしい。


『桜井ってうざくね』『うぜぇ』『ビビりか』『しょっちゅう何かきょどってやがんの』『あとすみませんんん!』『似てる!』『うっぜ』『謝ればいいと思ってんじゃねぇっつーの』『死ねばいいのに』『だな、さっさと死ねばいいのになー』
 そう言ってあいつらが笑った。

「お前の努力も実力も知らねぇのに、僻んで」
 ぐっと背伸びする。まだ痛みの残る背中と腹がびりっとした。顔に出たらしく、桜井は怒っているとも悲しんでいるとも取れる表情をした。心のままに嘲笑えれば、こいつもすっきりするのだろう。


『むかつくよな、青峰の奴』『偉そうにしやがって』『何様だっつう感じするよな』『つかゴールぶっ壊すって化け物かよ』『そのくせキレるし』『バスケしか出来ねぇくせにな』『めんどくさ』『なんで桐皇に来たんだか』『一人でやってろ』『俺たちはお前と違って凡人なんだっつーの』
 そう言ってあいつらが笑った。
 それが許せない。

「俺がむかつくんだよ」
 隣で殺気のようなものを滲ませている青峰に笑った。青峰は俺を睨むだけで何も言わなかった。







テーマはげっちゃんから!
佳典さんのデータの少なさに泣いた!

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ゆめのまにまに/大坪×緑間@十色神矢

 緑間という男は、その気位の高さでいろいろと損をしているのだろう。
 本人はそれを自覚しているようで、その上で改めようとは思わないらしい。それは恐らく、そういった自分を貫くことを許されるだけの力があったことと、やはりプライドが高すぎるからなのだ。少しでもいいから周りの空気を読み、合わせてくれれば、緑間はきっと部の中心としてもっと受け入れられたはずだ。だが、緑間の性格上それは不可能なのだろう。キセキの世代としての立ち位置が、またその傾向を強めていた。
 その行動が俺たちを見下しているからではないと気付いたのは試合直前、確信したのは負けてからだった。監督は最初からそのつもりで、高尾はちょっかいを出している過程で気付いたようで、宮地は同族嫌悪で、木村は俺と同じ時。
 緑間は俺たちを責めることをせず、非難、中傷すべて背負って立っていた。
 考えてみれば当たり前だったことだ。緑間はバスケにおける自分の才能を自覚しているし、才能だけに頼らないで努力することも怠っていない。見下す暇があるのなら練習しただろう。くだらない僻みに付き合うような男ではない。
 ただ、腹は立つ。
 才能だけを褒められることに反感を覚えていながら、何も言わないその自尊心に向かっ腹が立つ。努力も知られなくても良いという態度でいるから他の部員は気に食わないのだ。陰口も言われなれているかもしれないが、透かした顔で平然としているから気に障るのだ。こっちは俺と付き合いだして陰口が減ったとき、少しふっとしたのを知っている。そういうところで緑間は損をするのだ。
「おおつぼさん……」
 声につられて視線を下げると、腕の中でまどろんだままの緑間は微笑していた。眼鏡を外した顔はどこか幼くなって、こんな風にあどけなさを残したままの緑間を見れるのもあまりない。意地っ張りな恋人は寝顔が一番穏やかなのだ。
 顔立ちは秀麗といっても過言でないというのに、平時の緑間は高飛車であるが故に表情がきつく、また無愛想になる。不満顔の後輩ほど一緒に練習をやっていて苛立つものはいない。結局ここでも、緑間は損をしているのだ。
 だがそれすらも緑間らしさなのだろう。努力もしない相手に受け入れられようと媚を売るくらいなら、一生孤高でも構わないのだ。アホなのだ。
「……ったくよ」
 今は、頼ってくれるだけマシになったのだから強く文句は言えない。だがしつこく付き合っていくつもりだ。俺は、このように抱きしめてやれる。頑なな子ども一人を抱きしめるだけの腕はある。口説き文句を言えるような性格ではないし、そんな言葉は思いつかない。だから行動ですべて示す。素直でないこの男が納得するまで、何度でもくり返す。
 頭を撫でてやると、気に入らなかったのか眉が寄った。手を離せばまた表情は緩み、眠りの中に沈んでいく。
「……ふん」
 夢にいる俺の方が安心するなど腹立たしいことこの上ないが、それで甘え方を知らないこの恋人が微笑んでくれるというのなら、譲ってやらんこともない。
 どうせ今だけなのだから。






お題はげっちゃんから!
緑間って美人ですよね^^ 身長高くって受にするには面倒なところも大好きです^^

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さて、エンドロールです/笠松×今吉@十色神矢

 それじゃ、と黄瀬が呟く。試合開始まであと十数分、そろそろ構えなくてはいけないだろう。
「俺、そろそろ行きますけど」
「おう。俺もすぐ行く」
 俺の答えに、黄瀬はこくんと一度頷く。こういう気遣いを覚えたあたり、やはり内面も成長している。まったくもって、こいつの伸び幅は無限だ。
 くすっと安心できると笑う。後輩は過去最高の腕前で体調は万全、気分も気負っていない(と思う)し、いいコンディションだ。
「あ」
「あ」
 惜しむらくは、あの時一緒に帰らなかったことか。
 黄瀬の気遣いも虚しく、マヌケにも、俺は今吉と対面した。
「……よう」
「……おぉ」
 冷静に考えれば、別に控え室に閉じこもっていなくちゃいけない理由もないし、ここが立ち入り禁止であるわけでもないから、合う確率なんてかなり高い。それでも思わず止まってしまってから、挨拶した。今吉も、返した。そうして、いきなり今吉の気力が落ちてしまった。
「えー笠松やん。嫌やわ~、なんで会うねん。わざわざ会わんようしとったのに~……お前、なんでおるん? 試合始まるで」
「うわぁ、そりゃ俺のセリフだよ、あーちくしょう。あー、精神統一?」
「ほーか」
 いや、もう、がた落ちってレベルじゃなく落ちた。切り詰めていたのが落ちたって感じとは違うんだけど、ため息を吐きながら今吉が隣に座る。俺も高まってたはずのボルテージがだだ下がり。なんなんだか、間の悪さに笑いすら起きねぇ。
 今吉は天井を眺めながら、俺は床を見ながら、同時にため息を吐き出す。まだ何も始まっていないのに疲れたみたいだ。
 いや、俺はまだいいとして、今吉の下がり方は異常だ。気持ちは分かるが、しかしそれにしても。
「お前、やる気ねぇのな……」
「阿呆言うなや。お前相手に気ぃ抜かんで」
「うそくせぇ」
「あー……まあ、あれや、今年はキセキがおるやん」
 やるせないように今吉が苦笑する。その意味はなんとなく通じて、なるほどと思う。
「先輩の意地って奴か」
「そがん前向きやないわ。ただの僻みや」
 そう言う今吉の心情は、本当によく分かった。
 圧倒的な才能の塊で、無限の可能性。その成長は嬉しいし、実力は頼るところなんだけど、ひどく鬱陶しいと思ってしまうことも確かにある。嫉妬心っていうか、うん、たしかに僻みだ。
 特にこの試合みたいに、どちらかが絶対にいなくなる状況では思ってしまう。勝率を上げるためには俺たちだけの実力で戦うなんて出来ない。入れなくて負けて、やっぱり入れとけばよかった、なんてのは悔いが残る。
「けど、入れたら間違いなく、勝敗はキセキ同士の実力で決まるやろーな。俺らが横槍入れる隙なんてあらへんわ」
 心を読んだように今吉が言う。まあ、そういうことだ。
 はあっと再びため息が出る。その視線すら天井に取られて少々腹立つが、うまい言い返しも出来ないから黙っていた。
「決勝で会いたかったわ」
「まあな。けど、だからって何もしないわけじゃねぇだろ」
 後輩に恵まれるという運も、実力のうち。無理して前向きに受け止めるしかない。それに、お互いに後輩を信頼していないわけではないんだから、これ以上言っても詮無きことだ。
 よっと軽く掛け声をかけて立ち上がる。いい加減に部屋に行かないとまずい。
 ぐーっと、ほぐすように伸びをした。高まりはなくなったものの、話して落ち着いたのか気分はいい感じに凪の海みたいになってて緊張していない。これなら行けそうだなと心の中で拳を握る。
「行くん?」
「おう」
「なら、キスしたって」
「は?」
「お喋り駄賃や」
 今吉が言う。呆れて振り返ったら、丁度こちらを向いた今吉と目があった。つまらなそうな顔って思いながら近づくと今吉がかすかに笑った。
「ん」
「ん~」
 重なる唇を割って、声を捕まえる。誰かに見咎められる可能性は高かったが、しばらくも経たないうちに今吉が息切れして離れたため見つかることはなかった。
 近い位置で睨み合う。どちらもまだ軽く息切れしているのに言葉だけは余裕で、可笑しくなってくすりとした。
「おい、翔一。そんなんで、負けても知らねぇぞ?」
「ふん。お前だけは、俺が倒したるわ」
「ばーか。俺が倒すんだよ」
 今吉はふふんと笑って、そいじゃと振り返る。俺も部屋に戻った。
 途中で気付いたが、喋ったせいかずいぶんとマトモに考えられるようになっていた。凪いでいた気分もいい感じに高まりだしてて、ベストコンディション。現金な奴だ。
「遅いぞ、笠松。早くいけ」
「はい」
 途中で監督の叱咤を受けながらコートに立つと、割れるようだった声援が遠退いた。整列の一番端で向かい合う。
 今吉は、真剣に笑った。俺は、真剣に睨んだ。




さて、エンドロールです
(もうしばらく、おつきあいください)





タイトルは 魁ちゃんから!

二人は既にデキてます。
どっちも三年生ですしね、最後の試合って感慨深いんじゃないかと。
本誌は真っ只中ですね、笠松先輩の泣き顔が見たいので桐皇の勝利を願います。その後、赤司なるキセキに負けちゃうのが理想です(え

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おばけになっちゃえ/木総受@十色神矢

 木吉先輩は、一言で言えばたしかに変人だった。
 大雑把でどこかずれた感性を持っているらしく、いい人だけど曲者のように感じる。二年生第一位の学力があるのにバカだと日向先輩に言われつづけているし、口を開けば僕たちとは違うことを平気で言う。おかしいだろうと分かるのに、あまりに堂々としているので僕らがおかしいのかと思えてしまうときがある。それは素でやっているらしく、突っ込んでいいのかもよく分からない。面白いのか面白くないのかさえわからない。
 それでいて物事を見る目があるらしく、状況判断がすごく上手い。絡まった感情も簡単に言い当ててしまう。飄々としてどんな辺境の地にいる相手でも分け隔てなく接してくる。しかもそれは偽善ではないのだから驚きだ。性格のおかげかいい意味で決して敵を作らない。
 そんなことだから、木吉先輩に好意をよせる人は多い。今だって日向先輩と伊月先輩が目を見合わせているし、水戸部先輩がシュート練習をしながらちらちらと盗み見ている。小金井先輩と土田先輩は福田君と河原君を向いているが、やはりたまに別の場所を探っていた。
 その中心にいるのは木吉先輩で、それは、僕にとってとても面白くない。
「先輩」
「おっ」
 休憩中、座り込んだ木吉先輩のとなりから声をかける。いると思わなかったのか先輩は一瞬目を大きく見開いた。それでも思いっきりびっくりされるわけではないから助かる。大声を出されるのは僕も嫌いだ。
 そのまま大きなアクションもなく、のほほんとした感じで木吉先輩は笑う。なんだか可愛いと思いながらも、隣にいることを見咎められていきり立たれると困るから、先輩を盾に隠れるようにする。二年生はお互いに牽制し合っているからそう気にしないが、この頃火神君や降旗君も視線が向かっているから油断はできない。
「黒子は音がないな、ちゃんと足あるか?」
「僕は幽霊じゃありませんよ」
「けどお化けみたいだな」
「お化けはケーキを食べたりしません」
 他の人から言われたらむっとしただろうが、木吉先輩だとそうならない。つくづく不思議だと思う。
 見つめていたら先輩の頭越しに誰かと目が合いそうになって、慌てて隠れる。本当に油断できないと心の中でため息をついて本題に移った。
「先輩、アカンサスタイムのランチの割引券があるんですが、一緒に行きませんか?」
「マジ? デザート付く?」
 食いついた木吉先輩が、僕にだけに聞こえるように真剣な顔で訊いてくる。頷くと嬉しそうに笑った。
 木吉先輩は大柄だけどケーキとか小さくて甘いものが好きだ。僕も好きだから、一度一緒に行きたいと思っていた。そのために母親のものを譲ってもらったのだ。
「俺はいつでも暇だけど」
「じゃあ明後日にでも。二枚しかないので、キャプテン達には秘密でお願いします」
「よしきた」
 会話が終了すると同時に、監督が集合を掛ける。木吉先輩はさっと立ち上がって向かってしまう。少し残念に思いながら僕も立ち上がると、いきなり誰かの視線が背中に突き刺さる。振り返れば、皆が青や赤や白い表情になっていた。
 どうやら誰にも気付かれていなかったらしい。ミスディレクションのおかげもあるだろうが、皆木吉先輩ばかり見ていて盲目になっているんだろう。
 だから、少々挑発的に笑って見せた。何人かが一気に赤く染まったが気にしない。
 お化けに先を越されているようなら、皆まだまだだ。木吉先輩を一番に落とせるのは、僕かもしれない。





お題はげっちゃんから!
しかし時間かかりすぎワロタ
あと、木吉が学年一位とか希望です。

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