忍者ブログ

One for all,All for one!

くろこのばすけ身内企画!
MENU

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

さて、エンドロールです/笠松×今吉@十色神矢

 それじゃ、と黄瀬が呟く。試合開始まであと十数分、そろそろ構えなくてはいけないだろう。
「俺、そろそろ行きますけど」
「おう。俺もすぐ行く」
 俺の答えに、黄瀬はこくんと一度頷く。こういう気遣いを覚えたあたり、やはり内面も成長している。まったくもって、こいつの伸び幅は無限だ。
 くすっと安心できると笑う。後輩は過去最高の腕前で体調は万全、気分も気負っていない(と思う)し、いいコンディションだ。
「あ」
「あ」
 惜しむらくは、あの時一緒に帰らなかったことか。
 黄瀬の気遣いも虚しく、マヌケにも、俺は今吉と対面した。
「……よう」
「……おぉ」
 冷静に考えれば、別に控え室に閉じこもっていなくちゃいけない理由もないし、ここが立ち入り禁止であるわけでもないから、合う確率なんてかなり高い。それでも思わず止まってしまってから、挨拶した。今吉も、返した。そうして、いきなり今吉の気力が落ちてしまった。
「えー笠松やん。嫌やわ~、なんで会うねん。わざわざ会わんようしとったのに~……お前、なんでおるん? 試合始まるで」
「うわぁ、そりゃ俺のセリフだよ、あーちくしょう。あー、精神統一?」
「ほーか」
 いや、もう、がた落ちってレベルじゃなく落ちた。切り詰めていたのが落ちたって感じとは違うんだけど、ため息を吐きながら今吉が隣に座る。俺も高まってたはずのボルテージがだだ下がり。なんなんだか、間の悪さに笑いすら起きねぇ。
 今吉は天井を眺めながら、俺は床を見ながら、同時にため息を吐き出す。まだ何も始まっていないのに疲れたみたいだ。
 いや、俺はまだいいとして、今吉の下がり方は異常だ。気持ちは分かるが、しかしそれにしても。
「お前、やる気ねぇのな……」
「阿呆言うなや。お前相手に気ぃ抜かんで」
「うそくせぇ」
「あー……まあ、あれや、今年はキセキがおるやん」
 やるせないように今吉が苦笑する。その意味はなんとなく通じて、なるほどと思う。
「先輩の意地って奴か」
「そがん前向きやないわ。ただの僻みや」
 そう言う今吉の心情は、本当によく分かった。
 圧倒的な才能の塊で、無限の可能性。その成長は嬉しいし、実力は頼るところなんだけど、ひどく鬱陶しいと思ってしまうことも確かにある。嫉妬心っていうか、うん、たしかに僻みだ。
 特にこの試合みたいに、どちらかが絶対にいなくなる状況では思ってしまう。勝率を上げるためには俺たちだけの実力で戦うなんて出来ない。入れなくて負けて、やっぱり入れとけばよかった、なんてのは悔いが残る。
「けど、入れたら間違いなく、勝敗はキセキ同士の実力で決まるやろーな。俺らが横槍入れる隙なんてあらへんわ」
 心を読んだように今吉が言う。まあ、そういうことだ。
 はあっと再びため息が出る。その視線すら天井に取られて少々腹立つが、うまい言い返しも出来ないから黙っていた。
「決勝で会いたかったわ」
「まあな。けど、だからって何もしないわけじゃねぇだろ」
 後輩に恵まれるという運も、実力のうち。無理して前向きに受け止めるしかない。それに、お互いに後輩を信頼していないわけではないんだから、これ以上言っても詮無きことだ。
 よっと軽く掛け声をかけて立ち上がる。いい加減に部屋に行かないとまずい。
 ぐーっと、ほぐすように伸びをした。高まりはなくなったものの、話して落ち着いたのか気分はいい感じに凪の海みたいになってて緊張していない。これなら行けそうだなと心の中で拳を握る。
「行くん?」
「おう」
「なら、キスしたって」
「は?」
「お喋り駄賃や」
 今吉が言う。呆れて振り返ったら、丁度こちらを向いた今吉と目があった。つまらなそうな顔って思いながら近づくと今吉がかすかに笑った。
「ん」
「ん~」
 重なる唇を割って、声を捕まえる。誰かに見咎められる可能性は高かったが、しばらくも経たないうちに今吉が息切れして離れたため見つかることはなかった。
 近い位置で睨み合う。どちらもまだ軽く息切れしているのに言葉だけは余裕で、可笑しくなってくすりとした。
「おい、翔一。そんなんで、負けても知らねぇぞ?」
「ふん。お前だけは、俺が倒したるわ」
「ばーか。俺が倒すんだよ」
 今吉はふふんと笑って、そいじゃと振り返る。俺も部屋に戻った。
 途中で気付いたが、喋ったせいかずいぶんとマトモに考えられるようになっていた。凪いでいた気分もいい感じに高まりだしてて、ベストコンディション。現金な奴だ。
「遅いぞ、笠松。早くいけ」
「はい」
 途中で監督の叱咤を受けながらコートに立つと、割れるようだった声援が遠退いた。整列の一番端で向かい合う。
 今吉は、真剣に笑った。俺は、真剣に睨んだ。




さて、エンドロールです
(もうしばらく、おつきあいください)





タイトルは 魁ちゃんから!

二人は既にデキてます。
どっちも三年生ですしね、最後の試合って感慨深いんじゃないかと。
本誌は真っ只中ですね、笠松先輩の泣き顔が見たいので桐皇の勝利を願います。その後、赤司なるキセキに負けちゃうのが理想です(え

拍手[2回]

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

× CLOSE

カレンダー

08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

バーコード

ブログ内検索

× CLOSE

Copyright © One for all,All for one! : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]