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そして私は殺された/大坪×緑間@魁



ぴこぴこぴこ、ぱきゅん。ぴこ。チュラララッチャー。


効きすぎた空調のせいでからからと乾いた空気にどこか間の抜けたような、気の抜ける音が響く。ぱきゅん、ぴこ。りろん。軽い音にあわせて画面の中の赤や緑や紫なんかがくっついては消えてを繰り返している。ぴこん、と音を立てて画面から赤が消える。同じような画面が二つ並んだそれは所謂落ちゲーと呼ばれるもので、家にゲーム機の類を持たない現代っ子らしからぬ俺と緑間にとっては少しばかり縁遠い存在だった。


事の起こりは先日の部活終了後の高尾の一言からで、格ゲー落ちゲー、果てはRPGすらやったことの無い(正確に言えば皆無なわけではないのだが、現代っ子の代表のような高尾にとっては皆無と変わりないらしい)二人にそれらの素晴らしさを体感させる事が目的のようなのだげれど、生憎大坪も緑間も高尾の相手にはならなかった。まず落ちゲーで下ボタン押しっぱなしは自殺行為であることを教えておいてくれと大坪は思った。常識らしいがそんなことは知らん。教えていない高尾が悪いのだからあの一戦は無効にするべきだ。ゲーム開始でいきなりファウルを四つ取られた気分だ。まったく。

緑間もそんな風だったから、仕方なく俺と緑間が対戦して高尾はアシスタントに徹することになった。三十分ほど前の話だ。ちなみに既に対戦回数は両の手で足りないくらいにまで昇っている。勝率9割。これは俺が強いのでなく、単に緑間が弱すぎるのだ。未だに下ボタン長押しをしてしまうような有様に、いい加減高尾も匙を投げたのか沈黙を守っているものだから、男三人無言ですぐに動かなくなる画面を眺めている。実にしょっぱい。

「………」
「………」
「………あ」

ぱきゅん。チュラララッチャッチャー。

画面にでかでかと表示されたゲームオーバーの文字に、隣に座っていた緑間が抱えていたクッションに撃沈した。さらりと流れた髪から覗くうなじに腹の下のほうがざわざわしたような感覚を覚える。この後輩は態度こそ不遜であるものの、普段の言動は存外年相応に子供っぽいのだ。きゅう、と効果音がつきそうな姿にまたざわりと胸の内がざわめく。ちらりと高尾に視線を流せば心得たと言わんばかりにそっと部屋を出て行く。扉が静かに閉まったのを確認して、大坪は緑間のご機嫌取りにかかった。




(どちらが勝っても結局はおなじこと)(ヒエラルキーは既に決まっているのだから!)






お題は神ちゃんから!大坪さんを激しく取り違えている気がします!笑
落ちゲーが激しく下手な緑間ってかわいくないですかね?


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愛だからこそ/笠松×今吉@魁

ざあざあと大粒の雨がアスファルトに打ち付けられている。まるで空は地面に恋しているようだな、なんて無体なことを、今吉は思った。きっと恋しくて恋しくて、だから加減なんかできないくらい力いっぱいぶつかって砕けていくんだ。だから、雨音は何時だって泣いているんだ。

「いや、お前高三でそれはどうよ」

夢見がちな中学女子みたいなこと言ってんじゃねーよ。笠松は「げぇ」とでも言わんばかりな顔をしてこちらを見ている。まあ、確かに少し度を超してポエマーだったような気も、しなくもない。数瞬前を振り返って少し顔をしかめた。

「や、んー、ん。言いたかったんはそれやなくて…んん?」
「はっきり喋りやがれはっきり」「なんやよう掴めん……ん、ああそう、やからな」
「おう」
「俺らみたいやなぁ、て思うたわけデスよ」
「…………はぁ?」
「ちょ、えらい顔になっとんで」

けらけら、と軽やかに笑う声は雨に弾かれて反響しながら今吉達の足下に消えていった。ざあざあ。雨足は変わらない。

けたけたと笑い続ける今吉に何を感じたのか、笠松は少しだけ納得したような、それでいて気に入らないと言いたげな表情でもってこちらを見る。内心で肩をすくめながら、敢えて綺麗な笑顔を作るように、にっこりと笑った。

「な、ちゅーしたい」
「阿呆め」
「その阿呆に惚れとるんやろ」
「………」
「ん、んぅ」

ちゅ、と軽いリップ音。次いでぬらりと暖かい舌が唇の上を這った。雨の空気で冷やされた笠松の唇は存外冷たくて、唇を食む舌の熱さをより強く感じてしまう。鼻に抜けたような甘い声が出るのを、今吉は何時もどこか信じられないような心持ちで聴いていた。

甘く霞がかっていく脳みそで、今吉の思考は先程の問答に立ち返った。俺達はきっとコートの上で出会うのだ。それはいつか来るであろう確実な未来。そのときはきっと、俺達は互いを全力でもって潰そうとするだろう。確実な予感。

「ん、んン…っ、」

ずくずくに溶け出した理性に、今吉はあっさりと思考を放棄した。笠松の首に腕を回す。だって今この瞬間も、お互いに潰し合うその時も、ぜんぶぜんぶ―――――――

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仲直り/火神×木吉@魁

昔、今よりずっと小さい頃に母親に蝉は何故7日間しか生きられないのか尋ねたことがある。俺は今より地面が近くて、小さな手で蝉の抜け殻を壊さないように気をつけながら握り締めていた。抜け殻のかさついた感触を今はもう覚えていない。


もう放課後だと言うのに太陽はまだ元気で、じりじりと焼け付くような日差しを俺たちに向けていた。四角く切り取られた日差しを浴びながら、木吉は窓枠に頬杖をつきながらグラウンドを眺めていた。油蝉がひっきりなしに鳴いている。だと言うのに、教室の中はとても静かで、まるで俺しか居ないような気になってくる。実際は、教室の入り口のあたりに、火神がいるのだろうけど。きっと、困ったような、戸惑っているような、そんな顔をして。

みんみんみんみんみんみん。油蝉が鳴いている。たった7日ぽっちの人生を、一生懸命鳴いている。俺たちの一生の、本当にほんの刹那しか生きれないのに。

「…昔な、なんで蝉は7日しか生きられないのかって、母さんにきいたんだ」
「せんぱい?」
「その時はまださ、土の下で七年も過ごすとか知らなくて、単純にすっげえちょっとしか生きれないんだって思ってたんだ」
「……は、あ」

背後で戸惑ったような雰囲気がした。何を言いたいのかも、なぜこのタイミングで言うのかも、わかっていないだろう火神は、それでもきちんと聴いていてくれた。それは火神の優しさであったけれど、同時に残酷さかも、しれなかった。

「だから、『きっと7日間で燃え尽きてしまうほど、恋しかったのよ』って言われたけどよくわかんなかった」
「………」
「でもさぁ、今ならちょっとはわかる気がするんだ」
「せんぱ、い」
「なぁ、好きだよ」

振り返った火神は、予想していたのとは違って、困ったような顔はしていなかった。なにかに、酷く怒ったような顔を、していた。

ずかずかと、いきり立ったように近づいてきた火神は、もとのコンパスの差からか、すぐに木吉の前に立った。じりじりと焼くような、視線が痛い。

「せんぱい、俺はセミじゃない」
「………うん」

痛いくらい真剣な火神の眼がすぐ近くにあって、俺は目を閉じた。柔らかい感触に、少しだけ泣きそうになったのをきっと火神は知らない。

土から出た蝉は土に戻れない。ただ焦がれた空に向かって、恋をする。そして死に逝くだけ。俺たちはもう、元の関係には戻れない。仲直り、なんて陳腐な言葉が、使われる日はきっとこない。だから、せめてこの7日間が永遠に続きますように。


仲直り
(もともと直せるような仲なんて)(なかったのだけれど)



お題は神ちゃんから!いただきました

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